アルマクと幻夜の月
そんなアスラの考えは、給女の言葉で見事に崩れ落ちた。
「そんなわけには参りません!
王子殿下は姫様の伴侶となられる方なのですから、姫様には王子殿下に会っていただきませんと!」
「……は?」
思わず、アスラは立ち止まる。
そして息を切らして追いついた給女に尋ねた。
「それは、どういうことだ?」
「ですから、ベネトナシュの第五王子殿下がいらして、姫様とご婚約されると。
……姫様、ご存知なかったのですか?」
アスラが頷くと、信じられないというふうに給女は目を丸くする。
「本当ですか?」
「ああ、初耳だ。それは、誰が決めたんだ」
「私も詳しいことは存じ上げませんが、なんでも、王子殿下がご自分から国王陛下に提案されたそうです」
「何と言って?」