アルマクと幻夜の月



「汚れているし、砂漠を渡ってきて所々ほつれて駄目になってるから、高値でとは言わない。

これを買って、なにか安くて動きやすい服を売ってもらいたいんだが」


婦人は「ちょいと失礼」と言いながら、アスラのドレスの裾をつまんで、真剣な顔でまじまじと見る。


やがて顔を上げると。


「あんた、こんな高価なものどこで手に入れたんだい? いいとこのお嬢さんか何かかい?」


「え、いや……」


「いや、そのドレスはいただいたものだ」


アスラが返答に詰まると、イフリートが突然口を挟んだ。


「俺たちは旅芸人でな。ジャウハラの祭りのときに、こいつの踊りがさるお方のお気に召して、褒美にいただいた」


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