アルマクと幻夜の月
踊り子の衣装とはいっても簡素な構造をしていたので、さほど時間もかけずに難なく着られた。
被服室から出てきたアスラを見て、老婦人は満足そうに笑う。
「よく似合ってるじゃないか。ねえ、おまえさん?」
話を振られたイフリートは、何も言わずに頷いた。
「ぴったりだし、動きやすい。これを買うよ」
「はいよ。ありがとうさん」
老婦人は言って、アスラにいくらかのお金を渡した。ドレスとの差額分らしい。
「ありがとう、ご婦人」と言って店を出て行こうとするアスラを、
老婦人は「ちょいとお待ち」と呼び止める。