アルマクと幻夜の月
「死んだんだよ。つい昨日ね」
問いにもならないアスラの問いに、老婦人は短く答えた。
「国一番の踊り子だったのさ。五日前にジャウハラのために都へ行って、今日、訃報が届いた」
老婦人の言葉に、アスラは目を見開いた。
――ジャウハラの夜に死んだ、国一番の踊り子。
そんなの一人しかいない。
「あんた、親は?」
老婦人が唐突に尋ねた。――なんと皮肉な問いだろう。
「……もう、いない」
その答えに、老婦人は痛ましげにアスラを見た。
「それは、気の毒に。でも、あんたは孝行ないい娘さんだよ」