アルマクと幻夜の月
少なくとも、親より早く死んだりしなかったんだ。
そう言った老婦人は、微笑んではいたが悲しそうで。
「……それじゃあ、そろそろ行くよ」
いたたまれなくなって、アスラは呟くように言った。
「腕飾、ありがとう。娘さんのだろう?……大事に、するから」
精一杯、自然に微笑んで見せて、アスラは老婦人に背を向けた。
元気でね、と追ってくる声に、アスラは振り向かずに頷く。
前を向く気になれず、隣にならんだイフリートの足元を見ながら、
アスラは老婦人の店を後にした。