アルマクと幻夜の月
「マタルの領主は何をしているんだ」
苛立ちをあらわにアスラが言うと、
「どこもそんなものだろう」
と、イフリートがどこか冷めた目をして言った。
「アルマク朝の治世は現在のマリク王で十一代目。もう五百年にもなるか。
五百年も続けば良い方だろう。長く続けば続くほど、国は腐る。
そろそろ潮時だな。もってあと一代だろう」
涼しい顔で国の寿命を言い渡され、アスラはイフリートを睨みつけた。
反論しようと口を開き、だができなくて、すぐにその口を閉じる。
イフリートの言葉は正しい。
アスラも王女として、自国や他国の歴史を学んだので、それくらいはわかる。