アルマクと幻夜の月
そこまで考えたところで、アスラはふと思い出して、「なあ、」とイフリートを呼んだ。
「そういえば、おまえの王はどこの王なんだ?」
以前、イフリートが言っていた。
イフリートには仕えている王がいて、アスラの元にいるのはその王の命令だからだ、と。
「その王は、なぜおまえにあたしの従者となるように命じたんだ?」
以前はイフリートの存在自体がどうでもよかったので気にしなかったが、今は違う。
一緒に旅をしている者のことくらい、少しでも多く知っておきたい。
問われたイフリートは、ほんの少し目を伏せた。
何かを懐かしむようなその表情は、いつもの彼のそれよりいくぶんか柔らかい。