アルマクと幻夜の月
「かつてこのアルマクの地にあった国の、王だった。――もう、二千年も前の話だが」
「二千年……!?」
思っていたよりもはるかに大きな数字が出てきて、アスラは目を見張った。
「驚いたか。ではもっと驚くようなことを言ってやろう」
どこか誇らしげな表情で、イフリートは言う。
「――かの王の名は、ソロモン。神に知恵を授かり、数多くの天使や悪魔を従えた、偉大なる王だ」
あまりに途方もない話に、アスラは開いた口を閉じることさえ忘れてしまった。
「そのまぬけな顔をやめろ。まぬけがうつる」
などと、イフリートに暴言を吐かれているのに、怒る気にさえなれない。