アルマクと幻夜の月
「噂では、前々から姫様が気になっておいでだったそうです。
が、アルマクの第一王女であるアスラ姫が、第五王子などという身分にある自分の元へ来てくださることなど、まずないだろうと諦めていたようですわ。
それがその……」
給女は言いにくそうに言葉を濁した。
「構わない、言え」
と、アスラが促しても困ったように目を泳がせている。
「べつに、なに言われても怒らないから……」
「姫様にいつまで経っても縁談の一つも上がらないので、いちかばちかで名乗りを上げたんだそうですわ」
答えはあらぬ方向から返ってきた。
アスラと給女は二人揃って声のした方を見る。