アルマクと幻夜の月
「王は死の際に、従者であった人間に己れの魔力を分け与えた」
「もしかして、それがおまえか?」
「そうだ。私はソロモン王の魔力の一部を与えられたが、たった一部分でも、その魔力は私のようなただの人間には大きすぎた」
アスラにとってのイフリートは魔人であり、アスラのような本当のただの人間とは、違う存在だ。
だが、イフリートにも確かに、ただの人間だった時代があった。
そう思うと、イフリートの存在がすこし近くなったような気が、アスラにはした。
「だから、大きすぎる魔力に身体を蝕まれぬよう、私はソロモン王からいただいたランプに魔力の大部分を移し、必要なときに取り戻せるように大切に持ち歩いた」