アルマクと幻夜の月
どこかいじけたようなその顔が可笑しくて、アスラは小さく笑った。
「ソロモン王は私に魔力を与えるとき、一つ予言をした」
「予言? どんな?」
と、アスラが首をかしげると、
イフリートは優雅な動作で右手を持ち上げ、その長く細い指でアスラを指した。
「おまえだ」
「え……?」
「おまえが生まれることを予言した。
二千年後のこの地に生まれた孤独な王女が国を変える、と。
そして、王女を側で守れと命じられた」
はあ、と、気の抜けた返事が口から漏れた。
イフリートがアスラの従者となった理由はわかった。だが。
「ソロモンの予言は、きっと外れる」
アスラは苦い顔で言った。