アルマクと幻夜の月
「国を変える、なんて。
あたしにはそんな大層なことはできないし、するつもりもない」
だから、イフリートがアスラについてくる必要は、どこにもない。
――と、そう言おうと思って、しかしアスラにはできなかった。
本当にイフリートが去ってしまって、ひとりぼっちになるのは、アスラには耐えられない。
だが。
「不要ならば不要と言え」
イフリートはそんなアスラの思いなど、いともたやすく見抜いてしまう。
「そうでないなら堂々としていろ。
おまえが、私を連れ回すことに負い目を感じる必要はどこにもない」