アルマクと幻夜の月
なんとなくむずがゆい気分になり、アスラはイフリートから目をそらして、ただ小さく頷いた。
照れ臭くて右隣のイフリートの方を見ることができないので、代わりにアスラは前を向く。
街中を眺め歩きながら、アスラはイフリートが人間だった頃のことを思った。
その頃からこんなに偉そうな性格をしていたのだろうか。
ソロモン王にも、アスラに対するのと同じように不遜な態度だったのだろうか。
それとも、ソロモン王に対してだけは殊勝だったのか。
――かなり想像しがたいが。
そんなことをぼんやりと考えながら歩いていたから、アスラめがけて走ってくる者に、気がつかなかった。