アルマクと幻夜の月
――――ドンッ!
突然後ろから誰かに突き飛ばされて、アスラは前につんのめった。
イフリートが素早く反応して、アスラを抱きとめる。
「大丈夫か」
問いかけるイフリートに頷いて、アスラは顔を上げて、衝撃の正体を探した。
アスラにぶつかった人影は――少年は、振り返ってアスラに「すまねえ!」と声をかける。
だが急いでいるのか、その足を止めずに走り去っていく。
「危ないな、まったく……」
呟きながらそれを見送って、――少年の姿が消える前に、ハッと気がついて荷袋をまさぐった。
「ない……!」