アルマクと幻夜の月


「おまえ、……あたしと婚約しようとした変人か!」


「へ、変人……?」


キアンを指差してアスラが叫ぶと、キアンは微妙な顔をした。

だが、アスラはそれを無視して、


「ベネトナシュの第五王子がなんでこんなところに?」

と、ほとんど睨むような目で、警戒も露わに尋ねた。

アルマク王宮にいたはずが、なぜマタルにいるのか。


「まあ、表向きは遊学という形をとっている」


と言って、キアンは笑みを浮かべた。


「表向き?」


「そう。本当は、探し物をしているんだ」


探し物、と呟いたアスラの声を聞いて、キアンは小さく頷く。

そして。


「――君だよ」


アスラをまっすぐに見て、キアンが言った。

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