アルマクと幻夜の月
「私が探していたのは、君だ」
「……は?」
「一緒にベネトナシュに来てほしい。――私の、妻となってほしい」
何を言われたのかわからず、アスラはぽかんと口を開けたまま、何も言えずにいた。
妻に、なれ? 今日初めて会ったのに?
一国の王女として、会ったこともない相手と結婚させられることはある、というよりそれが普通だ。
――だが、これは違う。確かにキアンは王子でアスラは王女だが、これは違う。
「……えっと、訳が分からないんだが。目的は何だ」
そう尋ねたアスラに、
「目的なんて。君を愛しているから手に入れたいだけだ」
キアンは笑って、そんな歯の浮くようなことを言ってみせる。
アスラは不快感に顔をしかめた。
「胡散臭い顔して何言ってる。嘘を吐くなら、もうすこしわかりにくい嘘にしろ」