アルマクと幻夜の月
吐き捨てるように言ったとき、頭上でカラスの鳴き声がした。
直感が、それがイフリートだと告げる。
アスラは顔を上げてカラスを見た。
建物の屋根に止まったカラスは、アスラと一瞬目を合わせて飛び立つと、すぐ隣の建物にまた止まった。
まるでアスラを待つように。
「それじゃあ、あたしは急いでいるからもう行く」
「え、まだ話は……」
「結婚は諦めろ。もう二度と会うことはないと思うけど、まあ、元気で」
言い捨てて、アスラはカラスを追って走り出した。
おとなしくその背を見送って、キアンは小さなため息をつく。
「うーん、どうしたものかな、あれは」
困った困った、と言ってポリポリと頬を掻くキアンを見上げて、リッカがふん、と鼻で笑う。