アルマクと幻夜の月
「ま、あれじゃあ不快に思われても仕方ないですね」
「えー、でも、大抵の女性はあんなもんで落ちるんだけどなぁ」
「アスラ王女は別種ですよ。なんたって〝大地の申し子〟なんですから、そこらの浮ついた女と一緒だったら困ります」
「〝大地の申し子〟だって、人間の女性であることに変わりはないじゃないか」
「はいはい。面倒だから拗ねないでください」
リッカに軽くあしらわれて、キアンはますます拗ねた真似をする。
だがリッカがもう相手をしてくれないと分かると、「ま、いいか」と、すぐに立ち直った。
「〝予言〟の日はまだ先だ。もうしばらく様子を見よう」
キアンの言葉に、リッカが黙って頷く。
そして二人は、アスラが向かったのとは反対の方向へ歩き出した。