アルマクと幻夜の月
「それほどお美しいのに、そんな格好をして、そんな言葉遣いで。
もったいのうございますわ」
「あんたの意見なんか知るか」
「どうしてドレスを嫌がるのです? 綺麗に着飾るのがそんなにお嫌い?」
「ああ、嫌いだね」
アスラはスルターナを睨みつけて、吐き捨てるように言う。
「綺麗に着飾って綺麗と言われても、それは衣装が綺麗なのであってあたしが綺麗なわけじゃない。
綺麗に着飾らないと綺麗に見えないのなら、もとは綺麗じゃないってことだ。
今のあたしが正妃殿下の目に綺麗に映っていないのなら、それはあたしがもとから綺麗じゃないってことなんだろうさ。
だったら、着飾って綺麗と言われても虚しいだけだと、あたしは思うね」
本当は、動きにくくなるのが嫌なだけだが、そう言えばどうせ嫌味が飛んでくる。