アルマクと幻夜の月
イフリートについて行ってどんどん裏路地へ入り、建物と建物の間の細い隙間を抜け、それほど歩かないうちにたどり着いたのは、スラム街だった。
そこは――王宮で育ったアスラには、耐え難い光景だった。
家、などと言えるものはどこにもない。
古い板やボロ布で建てられたガタガタの小屋も、あれば良い方だ。
一歩進むごとに汚物の匂いが増す。路上には動物の死骸が転がっている。
ごみ溜めの中からかろうじて食べられるものを探す者もいた。
地面に寝転がって虚ろな目を空へ向ける者もいた。
それ以外の多くの者が、アスラに訝しげな、あるいは攻撃的な目を向けていた。
スラム街がどういうものか、話には聞いていた。
――だが、ここまでひどいとは。