アルマクと幻夜の月
それを聞いてまたしても「マタル領主は……」と言いかけたアスラだが、すぐに違うと気づいて黙り込む。
(違う。糾弾されるべきは、あたしたち王家の人間だ)
領主に問題があるのに気づきもせずにのうのうと生きているのは、アスラをはじめとする王家の者だ。
領主に自治を任せているとはいえ、それを監視するのは王の役目だ。
領主の過ちに気づけなければ、王の存在する意味はない。
アスラは女だ。
女は国の政治に口を出すことはできない。
王女として周辺諸国の言葉や歴史は学んだが、政治については教えてもらわなかった。
だからアスラに政治のことはわからない。
だが、それでも。
「あたしは、こういうことをもっと知っておくべきだったんだな」