アルマクと幻夜の月
アスラがぽつりと言うと、イフリートがすこしだけ驚いたような顔をして振り返った。
何か言いたそうに口を開き、しかしまた閉じてしまい、そして立ち止まると、「……着いたぞ」と、小さく言う。
二人の目の前には、子供達が座っていた。
家も天幕も何もない地面に、十数人が身を寄せ合って座っていた。
上は十二、三歳頃から、下は見たところ五歳にもならない子供もいる。
それぞれがスラムの子供の中でもとくにボロボロの服を着て痩せこけていて、それでも目だけは鋭い光を宿していた。
その中に、例のスリの少年もいた。
少年もアスラに気づいて、ただでさえ血の気のない顔をさらに青くした。
「おまえ……っ! こんなとこまで追ってきたのかよ!」