アルマクと幻夜の月
少年は逃げるように後ずさって、右手を背に隠した。
その右手にアスラの財布が握られているのを、二人とももう見てしまっていたが。
財布を返してくれないか、と、アスラが言いかけたとき。
「シンヤ、てめぇ……」
子供達が身を寄せ合う中、一番奥に座っていた少年が声を上げた。
子供達の中でも年長と思われる彼は、シンヤと呼ばれたスリの少年を睨みつけていた。
「なに部外者連れてきてんだ。アジトの場所がばれちまったじゃねぇか」
年長の少年の言葉に、シンヤは「……ごめん」と呟いてうつむく。
どうやら何かの修羅場らしいが、アスラにはさっぱり状況が飲み込めない。
アジトとは何のことだ、と、アスラはイフリートを見上げるが、イフリートも知らないようで黙って首を振った。