アルマクと幻夜の月
その間にも二人の少年の話は進んでいく。
「もういい、シンヤ。おまえは除名だ。二度と俺らに関わるな」
「え、まってよハイサム! それは……」
「黙れ。そんでさっさと出ていけ」
ハイサムと呼ばれた少年の容赦のない言葉が響くと、その場がしんと静まり返った。
うつむいたシンヤは両の手をぎゅっと握りしめてしばらく立ちつくしていたが、やがて諦めたように一歩足を引くと、くるりと振り返ってアスラの脇を通り抜け、走って行ってしまう。
予想だにしなかった展開に戸惑いながら、アスラはハイサムに「おい、いいのか」と声をかけた。
「知るか。おまえらも、目的はシンヤだろ。とっとと出ていけ」
憎悪さえ感じる眼差しで睨みつけられ、アスラは釈然としないながらも彼らに背を向けた。
ハイサムの言うことは正しい。
シンヤがいなければ、アスラたちがそこに留まる理由はなかった。
もうだいぶ小さくなったシンヤの背中を、二人は再び追いはじめた。