アルマクと幻夜の月
「いい、から、……あいつ、捕まえろよ!」
肩で息をしながら言うアスラに、イフリートは「なぜ最初からそう言わない」とぼやきながら、高く飛び上がった。
そしてシンヤが入っていった細い路地の出口に回り込み、人型に戻って待ち構える。
イフリートに気づいたシンヤが引き返そうとしたときには、すでにアスラが追いついて挟み撃ちにしていた。
「くそ! わかったよ、返せばいいんだろ!」
悔しげに言って、シンヤは財布をアスラに投げつける。
それを受け取ったアスラは、「なんだ、ずいぶん素直だな」と、拍子抜けしたように言った。
「その代わり、衛兵には突き出さないでくれ。俺がとっ捕まえられたら、母ちゃんが生きていけねぇ」