アルマクと幻夜の月
「おまえ、なんかやらかしたわけ?」
「追われるような悪いことはしてないぞ。でも、できるだけ衛兵には会いたくない。あたしの顔を知っていないとも限らないからな」
「ふぅん」
アスラの頭からつま先までを眺めやり、シンヤはふいに「あ、わかった」と、声を上げた。
「あんた、見たところいいところの嬢ちゃんだろ。んで、家出かなんかで衛兵に見つかると連れ戻されるとか」
「う……まあ、そんなところだな」
ほとんど図星を突かれて、アスラは苦い顔をする。
「一応踊り子の衣装を着ているのに、わかるものなのか?」
「まぁな。俺みたいなスラムで育った子供は、金持ちから財布かっぱらって生きてっから。金持ちを見分けるのは得意なんだ」