アルマクと幻夜の月



「おまえ、なんかやらかしたわけ?」


「追われるような悪いことはしてないぞ。でも、できるだけ衛兵には会いたくない。あたしの顔を知っていないとも限らないからな」


「ふぅん」


アスラの頭からつま先までを眺めやり、シンヤはふいに「あ、わかった」と、声を上げた。


「あんた、見たところいいところの嬢ちゃんだろ。んで、家出かなんかで衛兵に見つかると連れ戻されるとか」


「う……まあ、そんなところだな」


ほとんど図星を突かれて、アスラは苦い顔をする。


「一応踊り子の衣装を着ているのに、わかるものなのか?」


「まぁな。俺みたいなスラムで育った子供は、金持ちから財布かっぱらって生きてっから。金持ちを見分けるのは得意なんだ」


< 162 / 282 >

この作品をシェア

pagetop