アルマクと幻夜の月
シンヤは得意げに言って、「ま、俺のことをクソガキ呼ばわりしたときは、本当に金持ちの嬢ちゃんか自信なくなったけどな」と付け足した。
「うっさいな。あたしは確かにいいとこの嬢ちゃんだけど、そこらの嬢ちゃんと一緒にするなよ。おまえほどじゃないけど、あたしも盗まないと食べるものがなかったんだ」
アスラの言葉に、シンヤは「へぇ」と目を丸くする。
と、そこで、それまで黙っていたイフリートが「おい」と口を挟んだ。
「もう暗くなりかけてる。明るいうちに宿に戻るぞ」
言われて顔をあげれば、たしかに空が薄暗くなり始めていた。
イフリートの言う通り、明るいうちに戻ったほうがいい。
昼間でさえスリに遭ったのだ。
夜になればどれほど危ないかなど考えなくてもわかる。