アルマクと幻夜の月
4
*第一夜 4*
「……ったく、なんだってんだよ」
がらんとした広い廊下に、呟く声がこだました。
ここは宮殿の最東端。アスラの自室とナズリの部屋のある一角だ。
王宮で見放された二人の暮らすこの一角には、給女も近衛も寄り付かない。
王宮内でもっとも静かな場所だ。
「ふざけるなよ、結婚なんか勝手に決めて。するか、そんなもの! 王家のいいなりになんて、なってたまるか!」
誰もいないのをいいことに、アスラは怒りのままに怒鳴った。
よく通る声がだだっ広い空間に響いて、誰の耳に届くこともなく消えていく。
そのことが、余計にアスラの苛立ちを助長する。
「くそったれ!」
小さく怒鳴って、アスラは隣の壁を右の拳で殴った。――が。
「……ったく、なんだってんだよ」
がらんとした広い廊下に、呟く声がこだました。
ここは宮殿の最東端。アスラの自室とナズリの部屋のある一角だ。
王宮で見放された二人の暮らすこの一角には、給女も近衛も寄り付かない。
王宮内でもっとも静かな場所だ。
「ふざけるなよ、結婚なんか勝手に決めて。するか、そんなもの! 王家のいいなりになんて、なってたまるか!」
誰もいないのをいいことに、アスラは怒りのままに怒鳴った。
よく通る声がだだっ広い空間に響いて、誰の耳に届くこともなく消えていく。
そのことが、余計にアスラの苛立ちを助長する。
「くそったれ!」
小さく怒鳴って、アスラは隣の壁を右の拳で殴った。――が。