アルマクと幻夜の月

*第二夜 6*

真っ暗な部屋の中、アスラはそっと目を開いた。


ガラスのない窓から差し込む月明かりが、宿の部屋の調度を薄闇の中にぼんやりと浮かび上がらせる。


夢にうなされたわけでも、大きな音がしたわけでもない。

なぜ目が覚めたのか自分でもわからぬまま、アスラはゆっくりと起き上がった。


一人分の寝台に横たわるのは自分一人。

魔人は眠りを必要としない、とイフリートは言っていた。

二人同じ寝台で眠るというのは、アスラをからかうためのイフリートの冗談だったらしい。

昨日の夜は野宿だったが、背を向けて横たわったイフリートが本当は寝ていなかったとは思わなかった。


暗闇の中、従者の姿は見当たらない。

イフリート、と、寝起きのかすれた声で呼んでみても返事はない。


夜は長い。

眠らないまま、イフリートがずっとアスラのそばに控えているなどとは、アスラも思っていなかった。

おおかた散歩にでも出ているのだろう、と結論づけて、アスラは再び横になった。

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