アルマクと幻夜の月
「すこし散歩に、な。おまえが呼んだから、戻ってきた」
なにか用か、と問うイフリートに、アスラは笑って首を振った。
「いや、いなかったから呼んでみただけだ。どうして声が聞こえたんだ?」
魔法だろうな、と思いながら問うと、魔法だ、と答えが返ってきた。
「おまえが呼べばすぐにわかるように」
そんなこともできるのか、と、アスラは感心した。
魔力の源であるランプを失った彼にどれほどのことができるのか、アスラは詳しく知らないし聞いたところでわからないだろう。
だが、これだけ色々なことができたら、ランプがなくても困らないんじゃないかと思ってしまう。
そう言うと、
「阿呆」
と、怖い顔で睨まれた。
「困るに決まってるだろう。大きな魔法を使えないことももちろんだが、ランプに宿った魔力を悪用されないとも限らん。それに、……あれは、王の形見だ」
「そうか。……そうだな」
言いながら、ふと思った。