アルマクと幻夜の月
「……!?」
返ってくるはずの反動が返らず、アスラはよろけた。
体が右へ傾いで、バランスを整えようと手をついた壁がなぜか開いていく。
――扉が開いていたのだと気付いたのは数瞬の後。
アスラはそのまま、なす術もなく薄暗い部屋の中へ倒れこんだ。
バサバサと音を立てて、近くに積んであった紙の束がアスラの上に崩れた。
そしてとどめに、頭の上になにか小さくて硬いものが一つ落ちてくる。
「いった……」
床に打ち付けた肘をさすって、アスラは顔をしかめた。
ゆっくりと起き上がり、部屋の中を見回すと、机と椅子と、山ほどある本、何が入っているかよくわからない箱たちが雑多に転がっている。