アルマクと幻夜の月
だがすぐにその笑みを引っ込めると、
「それよりシンヤ、あそこで何してたんだ」
と、厳しい顔で問い詰めた。
問われたシンヤは一瞬返答に詰まり、アスラから視線をそらす。
「べつに、なんもしてねぇよ」
「何もってことはないだろう」
「ぼけっと立ってただけだってば」
「隠すのは、やましいことがあるからか?」
「うっさいな、関係ないだろ!」
頑として話そうとしないシンヤに、アスラは困ったように眉尻を下げる。
話したくないことならば、本当は無理に聞くようなことはしたくない。
けれど、シンヤはさっき、短剣を手に門番の様子を伺っていた。
領主の館に忍び込もうとしていたのか、門番に用があったのか。
いずれにせよ、よからぬことであるのは明らかだ。
ならばアスラは止めなければならない。
――止めなければ、アーデルと同じことになるからだ。
「関係ならある」
困り果ててどう言えばいいかわからなくなってしまったアスラの代わりに、イフリートが言った。