アルマクと幻夜の月
シンヤはただただポカンと口を開き、アスラの顔と差し出された手のひらを交互に見る。
アスラが何を企んでいるのか、知るのはアスラ自身のみ。
その企みが、シンヤの命がけの復讐を辞めさせるためなのか、それとも純粋に彼女自身がそうしたいためなのか。
アスラの、イタズラを思いついた子供のような無邪気な悪巧み顏からは、それはわからない。
――だが。
「……面白そうだから、乗ってやるよ」
シンヤもにやりと笑って、アスラの手を取った。
「面白くなかったら、領主を殺す計画をもう一回立てればいい話だからな」
「決まりだな。明日の昼頃に迎えに行く。まずは〈イウサール〉を取り込んでみせよう」
自身たっぷりに言ったアスラの後ろで、イフリートは小さな小さなため息をついた。