アルマクと幻夜の月

アスラの上に降ってきた紙には、アスラの知らない文字がびっしりと綴られていた。


「何なんだ、この部屋……」


寝台や椅子があることからして、元は誰かの部屋だったようだ。

だがそれらには厚く埃が積もっていて、長いこと誰もこの部屋に立ち入っていないことがうかがい知れる。


(でも、ならばどうして扉が開いていたんだ?)


アスラは扉の方を見て、――あ、と声を上げた。


扉の金具が外れて床に落ちていた。

おそらく、アスラが扉を殴った衝撃で壊れたのだ。


自分の不幸の原因が自分だと知って、アスラは微妙な顔をした。

そして言い訳のように「ま、この宮殿も古いからなあ」とつぶやいて、よっこいせと立ち上がる。


そのまま部屋を出ようとして、――しかしアスラは足を止めた。
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