アルマクと幻夜の月
「俺らを使って何しようってんだか知らねぇけどな、女。おまえを信用しろってのも無理な話だ。
おまえが裏切らねぇ保障はどこにある?
顔を晒すのはおまえだけだっつったが、なら万一おまえが捕まったとき、俺らのことを喋らねぇ保障がどこにある?」
アスラはハイサムの目を見返したまま、貼り付けていた笑みを引きつらせた。
(思っていたよりも切れ者じゃないか)
この、ハイサムという少年を侮っていた。
見たところ十四、五歳だが、なかなかに用心深く、頭の回転が速い。
「できればこの手は使いたくなかったんだけどな……」
アスラはひとりごちて、小さく笑うと。
「それなら心配いらない。あたしは絶対に捕まらないから」
と、自信満々に宣言してみせた。
「はぁ? なにを根拠に――」
「あたしは捕まらない。捕まるわけがない」
反論しようとするハイサムの言葉を遮って、アスラは言った。
「信じられないなら、勝負をしようか」
アスラの提案に、ハイサムは眉をひそめる。
「勝負?」