アルマクと幻夜の月
「…………わかった」
小さなため息とともに、ハイサムが答えた。
「実力を示せるなら異論はねぇ。場所はここでいいな。シンヤと、そのでかい男は下がってろ。手ぇ出すんじゃねぇぞ」
ハイサムの指示でシンヤとイフリートは酒蔵の隅に下がる。
〈イウサール〉の少年たちがぞろぞろと立ち上がり、ハイサムの周りに集まった。
そのうち一人の少年が、ハイサムの合図で酒蔵の隅から蝋燭を取り出して火をつけた。
開け放したままの入り口から差し込む薄明かりしかなかった地下が、わずかに明るくなる。
薄闇に隠れて見えなかった〈イウサール〉の少年たちの姿が露わになった。
数は十五、六ほど。
年の頃はばらばらで、見たところ七つにも満たない子供もいた。
ハイサムは他の少年よりも背が高く、最年長のようだ。
誰も彼も痩せこけて、幼い顔に似合わぬ暗い目をしている。
「いつまでやるんだ?」
ハイサムが問うと、アスラは「おまえたちがへばるまででいいさ」と答えた。
馬鹿にしやがって、とハイサムがぼやいた声を最後に、酒蔵に沈黙が降りる。
「――始めよう」
その静けさの中にアスラの声が降ったとたん、数人の少年が駆け出した。