アルマクと幻夜の月
王宮でいったい誰が知っていただろうか。
冷静なのに情に厚く、聡明なのに時たま愚かしいほどに正義感が強い。
王宮で捨て置かれたこそどろ姫の、こんな――どこまでも王者らしい一面を。
(ソロモン。……あなたの予言は、あたるかもしれないな)
イフリートはかつての主人に心中で語りかけた。
アスラは当たらないと言っていたが、おそらくは流れが――時代の流れ、世の流れが、この姫を放っておいてはくれないだろう。
現にこの新しい主人は、今もこうして関係のないはずの揉め事に首を突っ込んだ上に、その流れを自分のものにしてしまっている。
(面白い)
イフリートはアスラの横顔に、「おい」と声をかけた。
「ん? どうした?」