アルマクと幻夜の月
9
*第二夜 9*
娼婦にもらった黒いマントをかぶって、アスラは領主の館の前に立った。
手の汗をぎゅっと握り込んで、まっすぐ門へ歩いていく。
頭上でカラスが鳴いた。
イフリートか、と一瞬だけ思ったが、よく考えてみれば、イフリートはカラスの姿になることはあってもカラスの声では鳴かない。
思ったよりも自分は緊張しているらしい、と、アスラは小さく笑った。
いつもの娼婦だと思ったのか、門番はアスラを止めもせずに門を開けた。
小さく会釈をして、アスラは屋敷の中へ入っていく。
すぐに侍女が一人、迎えに現れた。
侍女はアスラの姿を見とめると、挨拶も何もなく、背を向けて歩き出す。
アスラは迷わずそのあとについて行った。
無愛想な侍女が案内してくれる、と、娼婦に事前に聞いていた。
広い館の中をしばらく歩いていくと、侍女がふいにある部屋の前で立ち止まった。
そしてその部屋の扉を小さく叩くと、「旦那様、ナラー様がおいでになりました」と声をかけ、アスラに一礼して去っていく。
娼婦にもらった黒いマントをかぶって、アスラは領主の館の前に立った。
手の汗をぎゅっと握り込んで、まっすぐ門へ歩いていく。
頭上でカラスが鳴いた。
イフリートか、と一瞬だけ思ったが、よく考えてみれば、イフリートはカラスの姿になることはあってもカラスの声では鳴かない。
思ったよりも自分は緊張しているらしい、と、アスラは小さく笑った。
いつもの娼婦だと思ったのか、門番はアスラを止めもせずに門を開けた。
小さく会釈をして、アスラは屋敷の中へ入っていく。
すぐに侍女が一人、迎えに現れた。
侍女はアスラの姿を見とめると、挨拶も何もなく、背を向けて歩き出す。
アスラは迷わずそのあとについて行った。
無愛想な侍女が案内してくれる、と、娼婦に事前に聞いていた。
広い館の中をしばらく歩いていくと、侍女がふいにある部屋の前で立ち止まった。
そしてその部屋の扉を小さく叩くと、「旦那様、ナラー様がおいでになりました」と声をかけ、アスラに一礼して去っていく。