アルマクと幻夜の月



「まぁ説明するけど、絶対に言いふらしたりするんじゃないぞ」


そう言って、アスラは話しはじめた。


まず、イフリートがネズミの姿になってアスラと共に領主の館に入る。

万一いつもの娼婦じゃないと気づかれて危険があった時のための保険だ。


そして何も問題がなければ、領主の寝室に入る前にイフリートは別れ、館中の人間を魔法で眠らせ、〈イウサール〉の者たちを招き入れる。


それから一度館を出て、黒馬になってシンヤを乗せると、アスラの合図があるまで窓の外で待機する。


合図があると、シンヤは領主に見つからないよう注意しながら窓を叩きはじめ、それと同時にアスラのいる部屋の一階下に待機する〈イウサール〉の者に合図する。


シンヤの合図を受けた者は、走ってアスラのいる部屋の前に待つ者に知らせに行き、一緒に扉を叩く。


そして領主が怒鳴るか近づくか、あるいはアスラが泣くかしたときに、 笑い声をあげて館中を走り回ってもらう。


誰かの笑い声を聞いたら、館中に待機している〈イウサール〉の者たちも一緒になって走り回ってもらう。


そしてそれが始まると、シンヤを乗せたイフリートは魔法でランプの炎を消し、豚の血の入った瓶をアスラがシンヤから受け取り、被る。


アスラは血を滴らせて亡霊の演技をしながら領主の首を絞める真似をし、最後は領主もイフリートの魔法で眠らせてもらうつもりだった。

その必要はなくなったが。



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