アルマクと幻夜の月
ぎゃんぎゃん喚くシンヤの口を塞いで、アスラは困ったような顔をする。
「なんで来たんだ」
シンヤはむすっとした顔で、口を塞いだアスラの手を押しのける。
「そんなの、決まってる。――俺も連れて行け」
まっすぐにアスラを睨んで言うシンヤに、アスラは深いため息をついた。
「断る」
「なん……っ」
「そう言う気がしたから黙って行こうとしたんだ」
言って、アスラは黒馬に飛び乗る。
「イフリート、行け」と命じると、イフリートがふわりと宙に浮きあがる。
しかしその後ろ脚に、シンヤがしがみついた。
「シンヤ、危ない! はなせ!」
「嫌だ! 意地でもついて行くからな!」
黒馬の後ろ脚にぶら下がったまま、シンヤが叫び返す。