アルマクと幻夜の月
「調子にのるな、マセガキが!」
「いってぇよこの凶暴女!」
「なんだとこのクソガキ!」
「ガキガキうるせぇよ! 一つしか違わないだろ!」
騒ぎはじめた二人を見遣り、イフリートはため息をひとつ。
「主人の命令があって、」
低い声で割り込むと、二人して黙り込んだ。
冷え冷えとしたイフリートの目を見上げたシンヤの顔が引きつる。
「私がその気になれば、おまえなどいつでも置いていける」
「う……」
「わかったら静かにしろ。子守はごめんだ」
イフリートはそう言い放つと、縮こまるシンヤから視線をはずして、アスラを見る。
「……な、何だよ」
じっと見つめてくるイフリートにたじろぎながらアスラが言うと。
「別に何も。……前を向いて歩け。転ぶぞ」
そう言ってイフリートは目をそらした。