アルマクと幻夜の月



釈然としないながらも、アスラは言われた通り前に向き直る。

隣のシンヤをちら、と見遣ると、ふてくされたような顔をしていた。


すこし意外だった。

アスラがどんな無茶をしてもため息一つ吐いて従ったイフリートが、シンヤに対しては怒りの表情を見せたことが。


無理を、させているのかもしれない。もしかしたら。


そう思い至って、なんだか情けない気持ちになった。


ビッラウラの街を歩き回って、三人は一軒の宿屋に入った。

もちろん、イフリートはネズミになって。


店構えが汚くなく、かつ、さほど値段の高すぎない良い宿だった。

ビッラウラはやはり旅の商人などが多く来るのかそういう適度な宿屋がたくさんあった。


一階は居酒屋になっているその宿屋の、アスラたちが借りた部屋は二階だ。

部屋に荷物を置いてすぐに、アスラはシンヤとともに一階へ降りてきた。



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