アルマクと幻夜の月



「……へぇ?」


あからさまに胡散臭そうな顔をしたアスラに、黙って聞いていた他の男たちが苦笑を浮かべた。



「こいつの言うことなんか無視していいぞ、姉ちゃん」


「そうそう。いくらなんでも荒唐無稽」


「いや、俺だって人伝てに聞いた話なんだよ! それほど信じてもいねぇよ!」


顔を真っ赤にして男が怒ると、他の男たちがゲラゲラと笑い転げる。


アスラも一緒になってひとしきり笑うと、「マタルで盗賊団の頭になって、その先は?」と尋ねてみた。


しかし、男は首をひねって、

「たしか、領主の館に盗みに入ったんだっけな。……そっからは知らねぇや。盗賊団に居座ってんじゃねぇか?」

と、曖昧な返事をする。


「なぁんだ。話としては面白いから、続きがあれば聞きたかったのに」


アスラは残念そうな顔をして、しかしすぐに笑みを浮かべると、立ち上がって宿屋の主人に昼食代を渡した。


< 235 / 282 >

この作品をシェア

pagetop