アルマクと幻夜の月
「……へぇ?」
あからさまに胡散臭そうな顔をしたアスラに、黙って聞いていた他の男たちが苦笑を浮かべた。
「こいつの言うことなんか無視していいぞ、姉ちゃん」
「そうそう。いくらなんでも荒唐無稽」
「いや、俺だって人伝てに聞いた話なんだよ! それほど信じてもいねぇよ!」
顔を真っ赤にして男が怒ると、他の男たちがゲラゲラと笑い転げる。
アスラも一緒になってひとしきり笑うと、「マタルで盗賊団の頭になって、その先は?」と尋ねてみた。
しかし、男は首をひねって、
「たしか、領主の館に盗みに入ったんだっけな。……そっからは知らねぇや。盗賊団に居座ってんじゃねぇか?」
と、曖昧な返事をする。
「なぁんだ。話としては面白いから、続きがあれば聞きたかったのに」
アスラは残念そうな顔をして、しかしすぐに笑みを浮かべると、立ち上がって宿屋の主人に昼食代を渡した。