アルマクと幻夜の月
さして驚いたふうでもないシンヤに、アスラは思わずクスリと笑った。
「そういえばおまえ、イフリートのことをあまり話していなかったな」
言ってから、ふと気づいた。
――イフリートだけではない。アスラ自身のことも、シンヤは何も知らないのだ。
「おまえ、今まであたしたちのことを聞いたことがなかったよな。気にならなかったのか?」
アスラが問うと、シンヤは「んー」と、少しの間考え込み、
「まぁ、気にはなるよ、そりゃあさ」
と、苦笑した。
「だってさ、そんなに年も変わらねえ、たぶん金持ちの姉ちゃんが身一つで、男一人従えて旅しててさぁ、すっげぇ頭良いし、なんか男の方は魔法みたいなの使えるし。気にならねぇわけねぇよ」
でもさ、と言って、シンヤはにっと笑う。