アルマクと幻夜の月




「人としての肉体はすでに滅びた。

本来ならば霊体である私が、人の形を保ち、実体を持ってこの世に存在しているのは、ソロモンの魔力故のこと」


「もともと人だったのが死んで霊体になったけど、魔力で実体を作ってるのが、……つまり魔人ってことか?」



アスラが首を傾げると、

「だったら、他にいてもおかしくないんじゃねーの?」

と、シンヤはさして興味もなさそうな白けた顔をして言う。


そうかもな、とアスラは頷きかけたが、イフリートが眉間にしわを寄せ、「いや、そうでもないだろう」と否定した。



「人は死ねば魂となって天へ昇る。魂に実体はなく、通常、その器となる体は一つしかない。

魂はすこしでも合わぬ器に入れば壊れてしまう」


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