アルマクと幻夜の月
イフリートに実体は、ある。
アスラもシンヤも実際にイフリートが見え、触れられる。
だがイフリートには、魂の器である体は存在しないと言う。
つまりイフリートは、見えて触れられる霊体ということにはならないだろうか。
「ソロモンの魔力で、霊体をそのまま実体化している……?」
半信半疑ながらアスラがつぶやくと、イフリートはまるで当然のことだとでも言うように、すこしも表情を変えずに頷いた。
「そういうことになるのだろうな。私も私と同じような魔人など見たこともないから、おそらく、としか言えんが」
だったら、と、アスラはつぶやく。
「なんらかの形で膨大な魔力を持った霊体が、その魔力を駆使して実体化する。……その条件さえ満たせば、魔人たり得る、と」
「そういうことになるな」
イフリートが頷いたとき、シンヤがおそるおそるといったふうに手を挙げる。