アルマクと幻夜の月
「心配をかけた、のか?」
背中に問うと、怒った、というよりも拗ねた主人の顔が振り返る。
「当たり前だろ、馬鹿! むやみに自分を傷つけるんじゃない!」
「傷はついていないが」
「だからそういうことじゃなくて!」
怒鳴った後で、アスラはついに額に手を当ててうつむいてしまった。
シンヤも引きつった笑みを浮かべている。
「あのな、おまえはあたしのものだ。そう、おまえが言ったんだ。そうだろ?」
「そうだな」
「誰だって自分のものが傷つくかと思ったら心配する。それが大切なものであればあるほど。……ま、つまりはそういうことだ」
なるほど、と頷くイフリートの後ろで、シンヤが「口下手かよ……」と笑いだす。
それを一睨みし、アスラはそのままイフリートのことも睨みつけた。