アルマクと幻夜の月
「だいたいなぁ、こっちはだいぶギョッとしたのに、当のおまえがケロっとしてたら、なんかムカつくだろうが!」
怒った、というよりも拗ねたような顔で怒鳴るアスラに、イフリートはただ怪訝そうな顔をするばかりだ。
それがまたかんに障ったらしく、アスラはぷい、と顔を背けてしまった。
「とりあえず、もう今みたいな、普通の人間が見たらびっくりするようなことはするな。目撃者がいたら大変だ」
「ふむ。それもそうだな」
「それはあっさり納得するのか……」
がっくりと肩を落としたアスラに、イフリートは相も変わらず怪訝そうに眉をひそめる。
そんな二人を見比べて、シンヤが小さく吹き出した。
「なにが可笑しいんだよ!」
すぐさまアスラが睨みつけるが、シンヤは一度吹き出すと笑いが引っこまなくなってしまったらしく、
堪えようとしながらも堪えきれずに抑えた声で笑い続ける。