アルマクと幻夜の月
やがて階段が途切れ、平坦な道に出た。
冷たい石に囲まれた暗闇の中、アスラの足音がやけに大きく響く。
この隠し通路を使うのは初めてだが、どの分岐路をどう進めばいいか、それぞれの道がどこに通じているのかは全て頭に入っていた。
もしものときに一人ででも逃げられるように、幼い頃に叩き込まれたのだ。
闇の中をどれだけ歩いただろう。
そこらの姫よりは根性には自信のあるアスラでも、そろそろ光が恋しくなってきた頃。
ランタンの照らす足元に、段差が現れた。
「出口、か」
階段の前で立ち止まって小さく呟いた声は、狭い通路に思いのほか大きく反響した。