アルマクと幻夜の月
深い呼吸を一度して、アスラはランタンの灯りを頼りに階段を上っていく。
だが、数歩もいかないうちに。
――ゴツッ!
鈍い音とともに、アスラはしゃがみこんで頭をかかえた。
「い…………っ!」
目に涙を溜めながら顔を上げ、アスラはランタンを頭上に掲げる。
ランタンの灯りに照らされて、冷たい石の壁に四角く切り取られた木の天井が現れた。――出口だ。
なんとなく、自室から地下通路へ降りた階段と同じだけの段数があると思っていたが、
考えてみればアスラの部屋は二階にある上に、王宮は街よりも高台にあるのだ。
馬鹿だな、と、アスラは苦笑を浮かべて呟いた。